七つの魔剣が支配する

七つの魔剣が支配する

宇野朴人の小説『七つの魔剣が支配する』のコミカライズ作品。相手を絶命せしめる剣技「魔剣」が六つ存在する世界で、キンバリー魔法学校の新入生であるオリバー=ホーンは、入学式の日に出会ったサムライ少女のナナオ=ヒビヤと過ごすうちに、彼女が第七の新たな魔剣を放つのを目撃する。魔法学校を舞台に繰り広げられる日常と、陰惨な復讐を描いたファンタジー復讐劇。「月刊少年エース」で2019年7月号から連載の作品。

正式名称
七つの魔剣が支配する
ふりがな
ななつのまけんがしはいする
原作者
宇野 朴人
漫画
ジャンル
ファンタジー
 
学園
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
巻数
全8巻完結
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

「入学式」

一流の魔法使いを目指す人々が通う名門「キンバリー魔法学校」の新入生であるオリバー=ホーンは、同じく新入生であるカティ=アールトガイ=グリーンウッドに話しかけられ、満開街道(フラワーロード)を同道していた。だが、校舎にたどり着いたところで新入生歓迎の魔法生物パレードに使役されている「トロール」の扱いに、カティとガイが言い争いを始める。人権派という亜人種の人権に進歩的なスタンスのカティと、魔法農家の出身として畜獣の扱いに保守的なガイの言い争いは、読書に勤しんでいたピート=レストンの顰蹙(ひんしゅく)を買いつつ、名家マクファーレンの長女・ミシェーラ=マクファーレンの仲裁によって収まりを見せる。しかし、何者かの悪戯によってカティに呪文が掛けられ、彼女は巨大な生物が行き交うパレードのただ中へ強制的に走らされてしまう。このままでは彼女が下敷きになる、という状況に割って入ったのは大英魔法国(イエルグランド)の中にあって異彩を放つサムライ風の装束に身を包んだ少女・ナナオ=ヒビヤだった。彼女の一喝によって魔法生物が怯んだスキに、オリバーたちは呪文を集束させて一つの巨大な呪文にすることで「竜の咆吼(ドラゴンボイス)」を再現して、魔法生物を怯えさせることに成功する。そのスキを見逃さず、魔法生物の巨大な頭部にナナオが一太刀を浴びせたことで辛くもカティは窮地を脱する。一行は入学式が終わったその後のパーティーであらためて一堂に会し、新しくできた友人として自己紹介を交わすのであった。

「魔法剣」

キンバリー魔法学校での入学式が終わり、新生活が始まっての第一の授業は「魔法剣」の授業だった。魔法のみでは一定距離で為す術なく剣士に負けうるという故事に則り、今時の魔法使いは魔法と剣術を組み合わせた戦闘技術を修めることになっている。初の授業でみんなが調子をつかめずに牽制し合う中、授業の前座としての立ち会いにナナオ=ヒビヤが希望者として手を上げる。新入生歓迎の魔法パレードで目立ってしまったがため、目を付けられていたナナオたち一同。その中でもナナオたちの活躍を快く思っていない人間側の代表格であるリチャード=アンドリューズが立候補したのを牽制するため、オリバー=ホーンは渋々ながら友人としての権利を主張してナナオの相手を引き受ける。二人の立ち会いは、当初はナナオを魔法剣の素人として見ていたオリバーが手を抜こうと考えるものの、ナナオの卓越した剣技による一振りで即座に甘い考えを捨て、全力で対抗する。一太刀を交わし負えたところでお互いに距離を取り見つめ合った二人だったが、その時、ナナオが瞳に涙を流し、「ここにござった」と告げる。それは、ナナオの剣術の流派における「仕合わせ」の相手。「相愛の剣こそ愉しけれ」という思想のもと、互いに尊敬し合った相手と尋常に果たし合うことを至上とする思想における対手を見つけたという涙だった。その涙を正面から見つめたオリバーは、衝動的に涙を止めるために命を賭した立ち会いに応じて、構えを取ってしまう。だが、教師であるルーサー=ガーランドが止めに入ったことで、勝敗はうやむやとなり、二人は事なきを得るのだった。授業のあと、ナナオはオリバーに思いの丈を告げ、あらためての「仕合わせ」を申し込む。しかし、オリバーは軽挙に走った自分の行いを猛省しており、ナナオの提案をにべもなく断る。ナナオは断られた悲しみから、涙を流すのだった。

「円形闘技場」

キンバリー魔法学校の新入生歓迎に行われた魔法生物パレードで起こった、カティ=アールトを巡る一連の事件は、新1年生のクラス中で亜人種に対する人権を広く認めるべきとする「人権派」と、現在の枠組みを維持すべきとする「保守派」による対立を招いていた。特に自らを轢(ひ)きそうになったトロールが処分されることすら拒否する「人権派」の代表格であるカティは、「保守派」からのやっかみの槍玉に挙げられており、彼女に対する嫌がらせは日に日に度の過ぎたものとなりつつあった。ある日の教室で、カティがいないのをいいことに、彼女を揶揄する悪口を並べ立てるクラスメートたちがいた。その様子にガイ=グリーンウッドの我慢は限界に達しようとしていた。しかしながら、要らぬ小競り合いはより両者間の対立を深いものとしてしまい、結果としてカティを追い詰める結果になると、オリバー=ホーンは冷静にガイを制して落ち着かせる。だが、カティが教室に戻ってくると彼女へ向かって直接的な行動に出たクラスメートに対して、オリバーも我慢の限界に達し、派手な喧嘩を繰り広げてしまう。結果、懲罰房に入れられたオリバーたちは、迎えに来たミシェーラ=マクファーレンに呆れられることとなる。この出来事がクラス内の「人権派」と「保守派」の対立を決定的なものとし、「保守派」を代表するリチャード=アンドリューズからの招待状がオリバーとナナオ=ヒビヤ宛に届く。それは、迷宮内に設けられた「円形闘技場」で、決闘を行いたいという内容だった。だが、舞台へ赴いた彼らを待ち受けていたのは決闘とは名ばかりの「犬人狩り(コボルド)」という、弱い亜人種を一方的に狩る残虐な遊戯だった。それに怒りを覚えたナナオは参加する意欲をなくすと、オリバー共々その場を立ち去ろうとする。面目を潰されることとなったリチャードが焦るその時、犬人(コボルド)の群の中から現れた魔獣が制御役の2年生を蹴散らして姿を現す。それは象国(インダス)の神獣に従う魔獣として名高い紅玉鳥だった。円形闘技場の扉も何者かに封鎖され、狩りは獲物と狩人の立場を逆転する形で再開されるのだった。

「蛇眼」

紅玉鳥との激闘をくぐり抜けた翌々日。キンバリー魔法学校の1年生のあいだでは、それまでとは打って変わってナナオ=ヒビヤが大人気となっていた。また、カティ=アールトに対する嫌がらせも表面上は落ち着きを見せる中、オリバー=ホーンリチャード=アンドリューズから、新入生歓迎の魔法生物パレードでの一件で呪文をカティに使った張本人が、クラスメートのマックリーであるという情報を知らされる。彼女自身に取り合って確証を得たオリバーだったが、依然として事件の全体像がつかめない状況に釈然としない思いを抱えていた。そんな折、カティがさらわれたという知らせをミシェーラ=マクファーレン(シェラ)が持ち込んだことで状況は一変する。さらには、カティを轢(ひ)きそうになったトロールのもとへ赴けば、本来は言葉を話すことのないトロールが不器用ながらに話し出し、カティが4年生の先輩であるヴェラ=ミリガンにさらわれたことを口にする。カティに対して同じ「人権派」の人間としてなにくれとなく手助けしてくれていたミリガンだったが、トロールの尋常ならざる様子から、オリバーとシェラは即座にトロールが彼女によって実験の材料にされた被検体であるという推察を得る。そして、次の材料にされそうな被検体がカティ自身であると推測した一同は、手遅れになる前にカティを救い出すため、手分けをして校舎を捜し始めるのだった。

関連作品

原作小説

本作『七つの魔剣が支配する』は、宇野朴人の小説『七つの魔剣が支配する』を原作としている。小説版はKADOKAWA「電撃文庫」より刊行されており、イラストをミユキルリアが担当している。「ラノベ好き書店員大賞2019」において文庫本部門第1位、「このライトノベルがすごい!2020」において文庫部門の総合第1位と新作第1位を獲得している。

登場人物・キャラクター

主人公

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。二代続く魔法家系の生まれだが、故あって親戚のシャーウッド家の世話になっている。その家で同じく育った、グウィン=シャーウッドとシャノン=シャーウッドの従兄姉は二人と... 関連ページ:オリバー=ホーン

キンバリー魔法学校に通う留学生の少女で、学年は1年生。東方(エイジア)は日の国(やまつくに)の東陸(とうりく)、永泉(えいせん)の武家の生まれ。本名は「響谷菜々緒」ながら、異国の風習にあわせて「ナナオ... 関連ページ:ナナオ=ヒビヤ

ミシェーラ=マクファーレン

キンバリー魔法学校に通う1年生の女子。大英魔法国(イエルグランド)に古くより居を構える名家マクファーレンの長女で、一族の人間が好む、特徴的な縦ロールの髪型をした金髪褐色肌の持ち主。名家の長女にふさわしく文武に秀でており、魔法をはじめとしたさまざまな知識に関する造詣も深い。一方で、名家の生まれにありがちな一般人や一般家庭出身の生徒に対する選民的な態度を取ることはほとんどない、面倒見のいい性格をしている。新入生歓迎の魔法生物パレードで起こった事件を通して、オリバー=ホーンが交流を持ったメンバーの一人。魔法に関する深い知識に加え、貴族社会の上層部に位置する人間としてメンバーの解説役やストッパーを担うことが多い。同様に文武を修め、幅広い知識を持つオリバーとはメンバーのリーダー役として、難事にあっては方向性を共有することも多くある。また、同じ知識レベルの人間として忌憚(きたん)なく意見を交わし合える存在であるためか、ほかのメンバーやクラスメートとはできないレベルの魔法や、特定ジャンルの会話を繰り広げる様子がしばしば見掛けられる。貴族社会に生まれ育った関係から、貴族の子女が多く通うキンバリー魔法学校には、ステイシー=コーンウォリスをはじめとした親戚や、リチャード=アンドリューズといった幼なじみが通っており、幼い頃から面識のある人間がいる。また、父親であるセオドール=マクファーレンはキンバリー魔法学校の臨時教諭を務める人間で、ナナオ=ヒビヤを遠く東方(エイジア)の地からスカウトしてきた張本人でもある。親しい人間からは「シェラ」という愛称で呼ばれている。

キンバリー魔法学校に通う1年生の女子。連合(ユニオン)北方の湖水国(ファーンランド)からの留学生。両親は若い頃に「理想郷(ユートピア)主義」に傾倒していた魔法生物保護を支持する「人権派」の人間で、幼い... 関連ページ:カティ=アールト

ピート=レストン

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。両親はどちらも非魔法族で、一般人の一般入試枠を実力で突破してきた才人。日頃からよく読書している姿が目撃される眼鏡をかけた人物で、さまざまな本や論文に対する知識を持つオリバー=ホーンとは本の内容で盛り上がることがしばしばある。新入生歓迎の魔法生物パレードで起こった事件で、オリバーが交流を持ったメンバーの一人。彼とはルームメートながら、当初は人との交流を拒みがちな性格もあって疎遠だった。しかし、クラスメートだったこともあり、パレードでの事件で交流を持ったメンバーで行動を共にしているうちに徐々に心を開いていく。一般人の家庭から入学したことからキンバリー魔法学校の危険性について疎い一面があり、迷宮の上に建てられたという経緯から、夜になると迷宮に侵食される校舎の特質を知らなかったために忘れ物を取りに行って飲み込まれるということもあった。その際は機転を利かせて付き添ったオリバーとミシェーラ=マクファーレンの手助けによって命を拾うものの、迷宮内で出会ってはいけない先輩にあげられるオフィーリア=サルヴァドーリとサイラス=リヴァーモア、二人の戦闘に巻き込まれかけるなど、非常に危険な目に遭っている。のちに、思いがけず「両極往来者」という体質を発現させる。月齢など、外部の影響によって日毎に性別が変わるという特異体質で、突然男性体から女性体になったことで戸惑いを隠せず、オリバーたちにも打ち明けられずにいた。だが、オリバーに体調の不良を見抜かれたうえ、同様の性別に関する魔法体質を持つ生徒の面倒を見ているカルロス=ウィットロウの目に留まり、同じ悩みを持つ人間が集まる集会に参加したことを機に悩みを解決し、みんなに体質のことを打ち明けるに至った。一個人としては悩みの多い体質だが、その一方で魔法使いとしては男性体、女性体を行き来することで不得意な属性の魔法が使用できるようになるという特異な才能を有することになったため、周囲からは祝福を受けている。

ガイ=グリーンウッド

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。魔法農家の出身で、幼い頃から稼業の手伝いのために土にまみれて過ごしてきた。そのため、農作物やそれを脅かす害獣への対処などに一家言ある。自分の感情に率直な性格をしており、喜怒哀楽といった感情を素直に顔に出す。また仲間思いな性格であり、カティ=アールトが魔法生物に対するスタンスの対立によってクラスメートからいじめに遭った時には、加害者に対して怒りをあらわにしていた。新入生歓迎の魔法生物パレードで起こった事件で、オリバー=ホーンが交流を持ったメンバーの一人。魔法の才能に関しては、細かい制御や知識面などに苦労しているようで、オリバーたちに泣き言を口にしている場面がたびたび見受けられる。一方の家業に関連した、魔法植物の取り扱いなどの分野では、幼い頃からの経験故に秀でた部分があり、特に毒蛇を駆除するため、体表に浴びた魔法薬に電流を流すことで嚙みついてきた蛇を効率よく仕留めていく、という方法は魔導工学の教師であるエンリコ=フォルギエーリの感心を誘った。

テレサ=カルステ

来年からキンバリー魔法学校に入学する予定の少女。同志たちと復讐に奔走するオリバー=ホーンの影として彼の直属に就けられた。並外れた隠形の術を持つ隠密で、オリバーに対する忠義心に篤い。彼女をオリバーにつけることを決定したグウィン=シャーウッドによれば迷宮生まれという特異な生い立ちを持つ。その生い立ちと幼い頃から訓練に明け暮れてきた結果、一般常識や他人との交流手段に乏しいところがあり、突飛な行動を取ってオリバーを驚かせることがある。また、滅多に顔を動かさない無表情な人物なのだが、その立ち居振る舞いや言動から喜怒哀楽といった感情が透けて見える幼さを残す。

リチャード=アンドリューズ

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。魔法の名家であるアンドリューズ家の嫡男で、同じ名家の生まれのミシェーラ=マクファーレン(シェラ)とは幼なじみの関係にある。そのため、ふだんはMr.アンドリューズと呼ばれることが多い彼だが、シェラからは幼い頃の愛称である「リック」と呼ばれることがある。新入生歓迎のために催された魔法生物のパレードで騒動に巻き込まれ、一躍名を上げたナナオ=ヒビヤやオリバー=ホーンたちを妬ましく思っており、初の魔法剣の授業からなにかと因縁を付けてくるようになる。昔はこのように偏屈な性格ではなかったが、才能豊かだったシェラと幼少時から比較され続けたことで屈折し、実家の名声を重んじ、一般家庭出身者などを見下すひねくれた性格となった。オリバーやシェラはそれでも彼との関係改善を図っていたが、魔法剣の演習で手加減しようか迷っていたオリバーの逡巡をナナオが見抜いて指摘したことで関係性は決定的に破綻する。結果、ナナオやオリバーとの実力差を衆目のもとで決しようと「犬人狩り(コボルドハント)」を主催するが、逃げ回るだけの犬人を狩るという酷薄な競技をナナオが嫌ったために頓挫する。さらには、第三者の手によって象国(インダス)の神獣の眷属として恐れられる「紅玉鳥」を犬人の中に紛れ込まされていたため、催しは一転して惨劇の場と化してしまう。ナナオとオリバーが状況を収めようと紅玉鳥に立ち向かう一方、リチャード=アンドリューズは恐ろしさから逃げ出してしまうが、恐怖を抱えながらナナオという勇者を一人にしないために戦っているというオリバーの決意を耳にして、最終局面で二人に力を貸した。それ以後はナナオとオリバー、シェラとの関係も一定の改善をみている。

マックリー

キンバリー魔法学校に通う1年生の女子。オリバー=ホーンたちのクラスメートの一人で、保守派のスタンスを取る。人権派として目立つ行動や、言動を取りがちなカティ=アールトに対して入学式の前から目を付けており、呪文によってカティの足をあやつり、魔法生物によるパレードに飛び出させたのも彼女の仕業だった。一方でトロールを巡る一連の策謀には関与しておらず、あくまで目障りなカティに対する悪戯をしていたという、立ち位置だった。

トゥリオ=ロッシ

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。「紅玉鳥」との騒動で、名実ともに魔法剣の実力者として知られることとなったオリバー=ホーンとナナオ=ヒビヤの活躍を妬み、「あの場に居合わせていたならば」と憤懣(ふんまん)やる方ない思いを抱えて燻(くすぶ)っていた生徒に声をかけ、「一年生最強決定戦」を主催した人物。オリバーたちに話しかけた際に「ちょっと才能に溢れすぎやで」と語るなど、独特の口調で話す。魔法剣の基幹三流派のどれにもとらわれない我流の剣を振るう名手で、純粋な才能だけを見ればオリバーを凌ぐ実力を有する。特に「乱戦(ラフファイト)」の技量や判断能力に優れ、手甲(アダマント)の僅かな装甲部分で剣筋を真っ向から受け止めて見せる常人離れしたセンスを持つ。反面、基幹三流派に対しては屈折した思いを抱えており、どの流派もまともに修めたことがないがための弱さを持ち合わせている。

ステイシー=コーンウォリス

キンバリー魔法学校に通う1年生の女子。トゥリオ=ロッシが主催した「一年生最強決定戦」にフェイ=ウィロックと共に名乗りを上げた。「一番強いのは私に決まっているじゃない」と気の強さをうかがわせる言動をしていたが、「紅玉鳥」の騒動の際には隅で怯えて震えていたのをフェイに見られており、行動を共にしている彼からは催しへの参加を心配されていた。ミシェーラ=マクファーレン(シェラ)の親戚筋にあたるが、シェラの把握しない理由から交流をさけており、あまり会話を交わしたことがない。

フェイ=ウィロック

キンバリー魔法学校に通う1年生の男子。トゥリオ=ロッシが主催した「一年生最強決定戦」にステイシー=コーンウォリスと共に名乗りを上げた。彼女とはふだんから行動を共にしており、「紅玉鳥」との戦いの際に実際のところは隅で怯えて震えていたというステイシーの実力や精神性を知るが故に、彼女を心配してこの催しに参加した。

シャノン=シャーウッド

キンバリー魔法学校に通う5年生の女子。オリバー=ホーンの従姉にあたり、同学年にいるグウィン=シャーウッドとは兄妹の関係にあたる。物静かながら心優しい性格で、従弟であるオリバーに対して深い親愛の情を抱いている。食堂で偶然に出会った時には人目を憚(はばか)らずハグをしてみせ、オリバーの友人たちを驚かせていた。1年下のオフィーリア=サルヴァドーリとは先輩後輩の関係から面識があり、彼女のことを愛称の「リア」と呼ぶほどには交流があった。自分以外の人間や生物の感情などを読み取る能力がある。

グウィン=シャーウッド

キンバリー魔法学校に通う5年生の男子。オリバー=ホーンの従兄にあたり、同学年にいるシャノン=シャーウッドとは兄妹の関係にあたる。落ち着いた性格で、謹厳な精神と口調で話す。オリバーに対しても同様に接するが、根底には従弟に対する親愛がある。かつてオリバーの母親を殺した七人の教師に対する復讐を目的とし、オリバーをその君主と掲げる一党の中心人物。迷宮内に兄妹の隠れ工房が存在し、そこでオリバーと会っては密談を繰り返している。音に関する魔法のスペシャリストで、楽器の取り扱いに精通している。カルロス=ウィットロウとは同学年ということもあって交流があり、彼が主催する「性に関する魔法体質」に悩む人物を集めた集会では、彼のコンサートの伴奏をコントラバスで務めていた。

アルヴィン=ゴッドフレイ

キンバリー魔法学校に通う5年生の男子。現キンバリー学生統括を務める。正義感が強く、非常に面倒見のいい性格をしており、5年間をキンバリー魔法学校という魔境で過ごしながらも一般的な常識が摩滅していない、希有な精神性の持ち主。迷宮に住まう住民からは「煉獄」と恐れられる炎の魔法の使い手で、その技の冴えはオフィーリア=サルヴァドーリとサイラス=リヴァーモアの魔獣を一挙に焼き尽くすほどの威力を誇る。かつては、同じ5年の監督生であるカルロス=ウィットロウと、4年生の後輩であるオフィーリア=サルヴァドーリの三人で連(つる)んで行動する時期があった。オリバー=ホーンたちとは彼らが夜の校舎から迷宮に迷い込んだ際に出会い、以後、なにくれとなく目をかけている。

オフィーリア=サルヴァドーリ

キンバリー魔法学校に通う4年生の女子。ふだんは迷宮の中に構えた工房に住んでいる。胸元の大きく開いたドレスを着こなす妖艶な外見をしている。人を魅了する効果を持つ「惹香(パフューム)」を周囲に振りまく特異体質の持ち主で、その効果は息を止めてなお脳髄へと染み渡るほどに強力。オリバー=ホーンによれば出会っていい先輩と、出会ったら死を覚悟しなければならない先輩の二種類がいるとされるが、オフィーリア=サルヴァドーリはそのうちの後者であり、「サルヴァドーリの貴婦人」と称される圧倒的によくないものと種別され、危険視されている。使用する魔法は短い小節の「生まれ出でよ(パルトゥス)」呪文で、自らが実際にはらんでいる魔獣を即座に産み出して使役するというもの。産み出された魔獣は、1年上級にあたる5年生のサイラス=リヴァーモアの魔獣に匹敵するほどの強さを誇り、呪文の短さに比して規格外の強さを発揮する。今でこそ迷宮の住人の一人として多くの人間から危険視されているが、かつては現学生統括であるアルヴィン=ゴッドフレイや、監督生のカルロス=ウィットロウとも親しく行動を共にしていた仲だった。特に親しい人間からは「リア」という愛称で呼ばれている。オリバーの従姉であるシャノン=シャーウッドも彼女のことをリアという愛称で呼んでいた。

カルロス=ウィットロウ

キンバリー魔法学校に通う5年生の男子。監督生を務めており、面倒見のいい性格で、ユニセックスな外見をしている。キンバリー魔法学校に通う生徒たちから恐れられているオフィーリア=サルヴァドーリとは、アルヴィン=ゴッドフレイと共に親しくしていた時期があり、今でも愛称の「リア」と呼ぶほど親愛な仲。キンバリー魔法学校で性別にかかわる魔法体質を持つことで悩みを抱える生徒たちによる集まりを主催しており、彼らが自分の体質を肯定的に認めたうえで学校生活が送れるように支援している。オリバー=ホーンたちとは彼らが夜の校舎で迷宮に取り込まれた際に出会った。またピート=レストンが両極往来者の体質を発現させた時には、その悩みを解消するために集会へと誘っている。その際、カルロス=ウィットロウ自身の魔声によるコンサートを開催していたのだが、伴奏のコントラバスを担当していたのがオリバーの従兄であるグウィン=シャーウッドだった。

ルーサー=ガーランド

キンバリー魔法学校で教員を務める男性。魔法剣の授業を担当している。気さくな性格で、礼儀作法にはうるさくない一方、生徒たちには自分を「ガーランド先生」か「師範(マスター)ガーランド」と呼ぶようにうながしていた。ふだんの歩き方からも熟達の剣士であることがうかがえる腕前の持ち主で、その剣速はオリバー=ホーンが切っ先を眼前に突きつけられるまでまったく反応できなかったほどに素早い。また、実際に戦場で戦ってきたナナオ=ヒビヤの腕前も凌いでおり、授業における仮想戦闘では10飛んで2回首をはねられたとナナオ自身が語るほど実力に開きがある。同じキンバリー魔法学校の教員であるダリウス=グレンヴィルも、紅玉鳥クラスの魔獣を一撃で葬り去るほどに、魔法剣の腕前に優れており、彼とのあいだには魔法剣の担当教諭を巡って過去に対立した確執があると噂されている。

ダスティン=ヘッジス

キンバリー魔法学校で教員を務める男性。箒術の授業を教える担当教諭で、「鳥葬」こそロマンと語る、独特な感性の持ち主。箒に乗って空を飛ぶことをこよなく愛している。自らも扱えず、数年にわたって乗り手を拒否し続けてきた荒箒に、簡単に認められたナナオ=ヒビヤの存在に調子を崩され続けている。

セオドール=マクファーレン

キンバリー魔法学校で臨時講師を務める男性。娘のミシェーラ=マクファーレンと同様に髪を縦ロールにした貴族然とした外見をしており、ふだんから箒や天井に天地逆さまに立ちたがる独特の感性をしている。魔道の名家で大英魔法国に古くから居を構えたマクファーレン家の人間であり、ふだんは世界中のさまざまな国を巡ってはキンバリー魔法学校へ通うべき才能を見いだすスカウティングに勤しんでいる。ナナオ=ヒビヤとは東方(エイジア)に赴いた際に戦場で出会っており、武士の独特な死生観に疑問を持って口出しし、彼女の魔法使いとしての才能を惜しんでキンバリー魔法学校へスカウトしたことが、結果として彼女の命を救うこととなった。

エスメラルダ

キンバリー魔法学校の学校長を務める女性。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「キンバリーの魔女」と称されている。その実力はほかの教師を圧倒しており、プライド高いダリウス=グレンヴィルをして魔法剣の腕前は彼女に次ぐと断言するほどのもの。入学式では新入生を相手に魔道を学ぶことの厳しさを、無事に7年間を全うできる生徒が8割しかいないという現実で語って怯えさせるなど、苛烈な性格をしている。オリバーの復讐対象となっている教諭たちのあいだでは個性的な面々を取りまとめるリーダー格となっている。

フランシス=ギルクリスト

キンバリー魔法学校で教員を務める老婆。呪文学の授業を担当している。魔法剣が一般的でなかった時代の、古式然とした常識を持つ。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「千年を生きる至高の魔女」と称されている。新入生を相手取った初授業では魔法剣を不格好と称するだけの実力の持ち主で、至近距離の自衛など「自動人形(オートマトン)」にやらせておけばいいと言い放ち、実際に大量の「自動人形」を同時に起動させて見せた。しかし、簡単に言い放っているようで実態は超高性能の「自動人形」を同時に動かすことのできる魔力を持つという、恵まれた才能を前提にした自衛であり、多くの生徒には実践不可能なものだった。ミシェーラ=マクファーレンらの見立てによれば、それも踏まえたうえでフランシス=ギルクリストは魔法剣以外の手段もあると発破を掛けているのだという見方がされている。

バネッサ=オールディス

キンバリー魔法学校で教員を務める女性。魔法生物学の授業を担当している。蓮っ葉な言動の荒っぽい性格をしている。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「魔法生態系の君臨者」と称されている。魔法生物学の授業の一環として生物を扱っているが、その方向性は「資源としての魔法生物」としての取り扱いであり、亜人種をはじめとした魔法生物への保護拡大や親愛を語る「人権派」とは真っ向から対立している。初授業から、魔力を注ぐと繭を形成するが、注ぎすぎると化物になって人を襲うという「魔法蚕」に魔力を注ぐ実践をさせるなど、その授業内容は「人権派」であるカティ=アールトの精神を揺さぶることとなった。また、亜人種の人権拡大にも一物を抱えているようで、ケンタウロスに人権が与えられていなかった際の思い出話として、肝刺しが酒のいいアテだったことを語っていた。

ダリウス=グレンヴィル

キンバリー魔法学校で教員を務める男性。錬金術の授業を担当している。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人。魔法剣の腕前に秀でており、その実力は学校長であるエスメラルダに次ぐ腕前を自負するほどで、過去に魔法剣の担当教諭の座を巡ってルーサー=ガーランドと確執があったと噂されている。実際に、彼よりも自分が師範(マスター)にふさわしいと吹聴しており、迷宮の深層に住まう紅玉鳥クラスの魔獣を歯牙にも掛けず、一撃で切り裂いていた。神経質な性格に野心家という一面を持ち合わせており、権力志向が強い。それは人間から愚かしさを駆逐することが彼にとっての「悲願」だからであり、周りの愚かしい人間に辟易としながらも教諭として教鞭を執っているのは、彼にとっては世界を変えようというわずかながらの抵抗だった。しかし、根源的には知性に手を加え、錬金術でいう「卑をもって貴へと変じる」必要があると考え、亜人種の脳に手を加えて知性を与えようとするヴェラ=ミリガンの研究に手を貸していた。

エンリコ=フォルギエーリ

キンバリー魔法学校で教員を務める老爺。稚気にあふれた言動をする。魔導工学の授業を担当しており、初授業からトラップの仕掛けられた箱の解体を生徒に任せるといった、言動相応に突飛もない授業を行う。つねにロリポップを手にしており、生徒へのご褒美としても配っている。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「魔道築学の理に遊ぶ狂老」と称されている。

デメトリオ=アリスティディス

キンバリー魔法学校で教員を務める男性。長髪でつねに瞑目している。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「知を超えた無知の哲人」と称されている。

バルディア=ムウェジカミィリ

キンバリー魔法学校で教員を務める女性。少女然とした小柄な体格と容姿をしているが、実年齢は不明。オリバー=ホーンの母親を殺した七人の復讐対象の内の一人で、オリバーからは「遍く生命を嗤う呪者」と称されている。

ヴェラ=ミリガン

キンバリー魔法学校に通う4年生の女子。セミロングヘアで、左目だけを隠すように前髪の片側を伸ばしている。亜人種の生態研究を専攻しており、同じく亜人種を愛する人物として、処分されそうになったトロールを教師のダリウス=グレンヴィルからかばったカティ=アールトを助けに入り、以後、彼女になにくれとなく世話を焼く。しかし、亜人種に親しく触れ合うカティとは異なり、ヴェラ=ミリガンは亜人種に知性を与えることを目的に生物実験も辞さない倫理観の持ち主であり、カティがかばったトロールもその被検体のうちの一体だった。前髪に隠されている左目は幼少期に親の手によって移植された石蛇(バジリスク)の魔眼で、視界に収めた対象に石化の呪いを振りまくものとなっている。この魔眼は強力な反面、適応率は一割未満という代物で、実際にミリガンの上の兄姉が適応できずに五人命を落としている。しかし、この危険な移植手術もミリガンにとっては親から与えられた愛情と受け取っており、ひいては亜人種に人体実験を施して知性を与える行動もカティが彼らへ注ぐものと同様の愛だと考えている。

サイラス=リヴァーモア

キンバリー魔法学校に通う5年生の男子。顎髭を生やし、制服ではない黒衣を身につけている。魔獣や人間といった種別を問わず、収集した骨を利用して巨大な怪物を成して使役する。ふだんは迷宮に構えた工房で過ごしており、浅い層に出てくることはあまりない。同じく迷宮で日々を過ごすオフィーリア=サルヴァドーリとは過去に争ったことがある。夜の校舎で迷宮に迷い込んだオリバー=ホーンたちが偶然遭遇し、彼らを追いかけていたオフィーリア=サルヴァドーリと戦闘を繰り広げたことで、オリバーらは危うく死地に巻き込まれそうになった。

場所

キンバリー魔法学校 (きんばりーまほうがっこう)

全寮制で7年制の魔法学校。現学校長はエスメラルダが務める。大英魔法国(イエルグランド)に居を構えており、ガラテア市街を出て東進し、二つ山を越えてたどり着く満開街道(フラワーロード)を進んだ先にある。「自由主義」と「成果主義」を校風に掲げる学校で、学校生活をまっとうできる生徒数は例年全体の8割ほどとされる。この脱落者の多さは魔道の研究の末に精神を損ない、命を落とす者が絶えないことを意味するが、魔道を学ぶということ自体がそうしたリスクを伴うものであるため、キンバリー魔法学校もそうしたリスクを許容するシステムとなっている。別名として「魔宮キンバリー」とも呼ばれるが、これは校舎がかつてここに存在した迷宮に封印をするような形で建築されたためで、地下には未だに広大な迷宮が存在するためである。また、夜ともなれば日中はふつうの校舎だった上部も迷宮に侵食され、ただ歩くだけでさまざまな危険に襲われることも揶揄している。

その他キーワード

イアース

新入生を歓迎するキンバリー魔法学校の魔法生物パレードで、カティ=アールトへのイタズラに使われた呪文。その際に唱えられた「地を蹴り駆ける」という呪文には本人の意に沿わず勝手に足を動かして走らせる力があり、カティを暴走するトロールのもとへと駆け出させた。

トニトゥルス

窮地に陥ったカティ=アールトを救うために、ミシェーラ=マクファーレンが使用した呪文。シェラが使用した時には「雷光疾りて」という呪文を唱えていた。目標に稲妻を放ってぶつける呪文だが、トロールが頑丈すぎたために振り向かせることすら叶わなかった。ガイ=グリーンウッドの実家では害獣である蛇の駆除に使用されている。その方法は身に魔法薬を被って電撃を自分の体表に流し、身にまとうことでまとわりついてくる蛇を焼き払うという大胆な方法で、その際には「雷衝纏いて」と唱えられている。

フランマ

窮地に陥ったカティ=アールトを救うために、ガイ=グリーンウッドやピート=レストンが使用した呪文。彼らが使用した際には「火炎盛りて」という呪文を唱えていた。炎を発射して相手にぶつけるという呪文だが、火力が低すぎたためにトロールには効果がなかった。

インペトゥス

起風呪文と呼ばれる呪文の一つ。発動すれば文字どおり風を起こす力がある。本人の意に沿わず暴走するトロールの前に放り出されたカティ=アールトを助けるため、一計を案じたオリバー=ホーンの頼みでミシェーラ=マクファーレンたちが使用した。その際には「吹けよ疾風」という呪文が唱えられていた。発展的に相手を切り裂く魔法として使用することもでき、リチャード=アンドリューズが使用した際は「風よ切り裂け」という呪文で犬人(コボルド)を切り裂いていた。ほかにも、ヴェラ=ミリガンを相手にしたオリバーが使用した際は、「貫け風槍」という呪文で石壁を貫きながらミリガンにせまる威力を発揮して見せた。また、ミリガンが使用した際には「切り裂け刃風」と唱えられている。

ティーピア

暴走するトロールの前に放り出されたカティ=アールトを救うためにオリバー=ホーンが使用した呪文。ミシェーラ=マクファーレンたちが使用したインペトゥスの呪文を集束し、巨大な竜の咆吼(ドラゴンボイス)を再現した。その際には「笛吹き鳴らす」という呪文が唱えられている。食物連鎖における上位存在である竜(ドラゴン)の鳴き声の効果は絶大で、暴走したトロールですら怯ませ、窮地にあったカティを救う千載一遇の機会をつくり出した。

セークールス

魔法剣の授業で使用された不殺の呪文。杖剣に使用することで切れ味を失わせる効果があり、指で切っ先を触っても傷つかなくなるほどの効果をもたらす。立ち会いや授業など、切り結ぶ必要がありながら負傷を避けたい場合に使用される。その際には「切らず貫かず」という呪文で唱えられる。どの程度の効果をもたらすか操作でき、非合法な場では効果をわざと弱めて使用される。

グレイヴソイル

魔法剣の授業でオリバー=ホーンが使用した呪文。相手が体重を掛けている地面を泥のように不確かにする呪文で、石畳でも足首が沈み込むほど瞬時に柔らかくできる。オリバーが使用した際には「沈む墓土」と唱えられていた。魔法剣における近接の攻防で相手の体勢を崩し、剣勢を損なう目的で使用される。

パルトゥス

オフィーリア=サルヴァドーリが使用した呪文。自分の胎内にはらんだ異形を通常の出産とは異なる方法で産み出し、戦闘力として行使する呪文でサイラス=リヴァーモアとの戦闘で使用していた際には「生まれ出でよ」と唱えられていた。実際にはらんだ異形を産み出しているだけなので召喚魔法とは異なり、一節の呪文で強力な魔獣を呼び出すことができる。また、胎内にはらむ魔獣は一体とは限らないようで、オフィーリアは一度の戦闘で数回にわたって呪文を使用し、その度に魔獣を産み出していた。

コングレガンタ

サイラス=リヴァーモアが使用した呪文。収集した魔獣をはじめとするさまざまな生物の骨を集め、巨大な骨の怪物として使役する呪文で、オフィーリア=サルヴァドーリとの戦闘で使用していた際には「集い形成せ」と唱えられていた。サイラスはふだんから迷宮で死肉漁りをしており、そこで見つけた異形の骨を使用している。そのため、同じく4年生であるオフィーリアですら見たことのない骨が使用されている。

イグニス

アルヴィン=ゴッドフレイが使用した呪文。相手を巨大な炎で焼き払う呪文だが非常に強力で、オリバー=ホーンたちが手も足も出なかった4年生のオフィーリア=サルヴァドーリやサイラス=リヴァーモアが使役していた魔獣を一度に焼き払うという芸当を見せた。

フラルゴ

激昂したオリバー=ホーンが使用した呪文。瞬時に爆発を生じさせる呪文で、カティ=アールトにいじめを働こうとしていたクラスメートを牽制する目的で使用された。その際には「瞬き爆ぜよ」という呪文が唱えられていた。相手やカティの至近距離で爆発はしていたものの明確な傷を負わせてはいなかった。

イクストルディートル

紅玉鳥との戦いでオリバー=ホーンが使用した押込み呪文。敵の特性を理解していなかったナナオ=ヒビヤの窮地を救うために使用されており、オリバーによる事後の説明で「押込み呪文(イクストディートル)」という呪文を使ったという説明がされていた。文字どおり、相手を押込み吹き飛ばすための魔法で、使用されたナナオは壁際まで勢いよく吹き飛ばされていた。

グレイヴステップ

ラノフ流と呼ばれる魔法剣の流派の一つで使用される呪文。紅玉鳥を相手にしたオリバー=ホーンが使用した際には、「墓石蹴り」という呪文が唱えられていた。相手へ踏み込む足の裏側に凹凸を作り出すことで、相手の想定を超えて深く踏み込めるようにする技法で、オリバーが実際に使用した際には地面すれすれに体を倒す極端に低い姿勢で相手に切り込んでいた。

クリペウス

ヴェラ=ミリガンとの戦いでオリバー=ホーンが使用した呪文。地面を隆起させて即席の遮蔽物を作り出して相手の視界などを阻む呪文で、使用された際には「仕切りて阻め」と唱えられていた。オリバーがその後に「貫け風槍(インペトゥス)」を使用して遮蔽物の裏側から奇襲を仕掛けた一連の流れは、ミリガンに定石外の攻撃と評されている。

ドロール

掛けられた相手に激痛を与える呪文。傷を負わせず相手に激痛だけを負わせることのできる性質上、拷問や尋問、罰などに使用される。「呻き苦しめ」「鞭に打たれよ」「腹から裂けろ」「指から抉れろ」「骨まで焼かれろ」「溶けて崩れろ」「崩れて落ちろ」など多種多様な激痛を与えることができる。オリバー=ホーンやダリウス=グレンヴィルが使用した際には、さまざまな内容の「ドロール」が口にされていた。強力で多様性に富む反面、術者が過去に体験したことのある激痛しか再現できないという制約がある。

奈落を渡る糸 (あんぐすたゔぃあ)

オリバー=ホーンがダリウス=グレンヴィルとの戦いで使用して見せた第四の魔剣。数多に分岐する可能性の分岐から、自らの望む結末に最も近い未来へ道標を打つことで自分をそちらへ引き寄せるという「因果を渡る魔剣」で、未来を完全に観測することはできないと、「予知」すら否定された魔法界における常識を逸脱した魔法剣。本来の持ち主は故人であるオリバーの母親であり、使い手もろとも既に失われたと考えられていたが、秘密裏に息子であるオリバーが継承していた。もっとも、魔剣はオリバーの身には過ぎたるもので強引に再現しているに過ぎないために体への負担が大きく、彼自身は3回目から死を覚悟する必要があると口にしている。実際、一度使用しただけで全身から多量の出血をしており、尋常ならざる体への負担をうかがわせた。

一年生最強決定戦 (いちねんさいきょうけっていせん)

トゥリオ=ロッシによって主催された、キンバリー魔法学校の現1年生で最も強い生徒は誰かを決める非公式のイベント。参加者は7日間、自分が作成したオリジナルのメダルを肌身離さず身につけることとなっており、最終的に最も多くのメダルを所持していた人間が勝者となる「メダル争奪戦」となっている。開催の遠因となったのはオリバー=ホーンとナナオ=ヒビヤが巻き込まれた紅玉鳥との一件で、自らの腕前に自信を持つ1年生たちが、あの場に居合わせたならば自分も倒せたという強い自負心から、最強という栄誉を欲したことが背景にある。

騙る植物 (ぷらいどぷらんと)

花に顔が付いたしゃべる植物で、婦花(ダリア)とも呼ばれる。非常におしゃべりで、道行く人々に話しかけては辟易するほどのお節介をかけてくる。その性質には地方によって差があるようで、特にガラテア市街からキンバリー魔法学校への道中である、満開街道(フラワーロード)に植生しているものはたちが悪いことで有名。毎年、新入学を迎える生徒を迎えるために開花時期をそろえようとすれば、対価として満足するだけの芸を要求される。その役割はキンバリー魔法学校に通う7年生が代々引き継いでおり、巷には「地獄の一発芸大会」として知られている。

トロール

畜獣として認識される巨人のような生物。一般には家畜としてやりとりされており、ガスニー種やクランド種、エルニー種といった種別がある。野生の個体は畑や人を襲うために害獣としても認識されており、農業を営む家庭においては駆除の対象となる。文字も言葉も持たないため、人権の認められている亜人種とは一線を画して考えられているが、カティ=アールトの実家にいたパトロという個体は子守歌を歌い、幼い頃のカティをあやすといった、優しい心根の持ち主だった。また、例外的な存在ではあるが、ヴェラ=ミリガンによって生物実験の施されたトロールは不器用ながら人語を解すにまで至っている。その巨大な体軀に見合う頑強な体をしており、入学式すら迎えていない新入生の呪文はその体表で防ぎきり、その頭蓋骨はナナオ=ヒビヤの刀による渾身の一撃をはじき返してみせた。

(ほうき)

魔法使いが空を飛ぶために使うもの。厳密には「ブルーム科ビゾン属」と呼ばれる魔法生物で、この生物の死骸を掃除に使ったのが現在の「箒」の始まりとされている。そのため、魔法にかかわりのない一般人が思い描く掃除道具の「箒」とはまったくの別物でありながら、「魔法使いは箒に乗って空を飛ぶ」というイメージのために、よくよく両者が混同、または魔法生物である「箒」を知らないがために掃除道具で空を飛んでいるとカンちがいされている。生き物である以上、乗り手とのあいだには相性があり、性格や気性も箒ごとに異なっている。中には自分の認めた乗り手以外が触れることを数年にわたって拒否するような荒箒もいる。

時だまし (くろっくのっく)

時計の針にまとわりついて時間を狂わせる存在。イタズラ好きで、時計が狂うと人間がとまどうことに喜びを感じ、針を動かしながら人を小馬鹿にしたような歌を口ずさんでいる。どことなく透き通ったトカゲのような外見をしており、頭の側面に翼のような部位が生えている。その一方で後ろ足が存在せず、蛇のような尻尾のみの形をしている。対処法としては時計にガラスの覆いをつけることでイタズラを防ぐことができる。

魔法蚕 (まほうかいこ)

魔力を注ぐと途端に糸を吐き出して繭をまとった蛹になる性質を持った魔法生物。完全に家畜化されており、手のひらサイズの巨大な芋虫じみた外見ながら、その愛嬌からペットとして飼育する人もいる。魔力を注ぐと即座に繭を作るという性質がある一方で、適切な量を超えて魔力を注いだ場合、真っ白な繭が黒く染まり、人を襲う化物として孵る性質がある。魔力の操作に長けた人間には簡単な作業だが、完璧にこなすのは専業とする養蚕家でも難しいとされる。

紅玉鳥 (がるだ)

神獣の眷属として恐れられる、象国(インダス)の魔獣。鳥頭をした人型をしており、両手両足には鋭い爪を持ち、背中には巨大な翼を有している。炎と風の精霊を従える恐ろしい魔獣として知られ、その強さは弱体化の処理が施されていてもキンバリー魔法学校の2年生を容易く一蹴するほどのもの。リチャード=アンドリューズが主催した「犬人狩り(コボルドハント)」の犬人の中に混ぜられており、オリバー=ホーンやナナオ=ヒビヤをはじめとした参加者のみならず、逃げ場をふさがれた観客たちも相対することとなった。オリバーたちが相対した紅玉鳥は、人為的な弱体化処理によって腿の毛が刈られることで炎の精霊を使役できなくなっていたものの、一時はオリバーの腹が引き裂かれるほどに追い詰められるなど、圧倒的な力を誇った。また、一般には風の精霊を従えると知られていたが、戦闘中にオリバーが観察したところ、実際は共生関係に近く、紅玉鳥が使役しているのではなく、紅玉鳥の魔力に惹かれた風の精霊が巣くっているだけに過ぎなかった。そのため、紅玉鳥の虚を突いたとしても風の魔法が自動的に発動される反面、風の精霊のつねとして同族のもとに集まるという習性を制御することができず、オリバーが風の呪文によって誘導したスキを突かれてナナオに仕留められている。

魔剣 (まけん)

魔法使いが使う魔法剣の中でも秘奥義とされる剣技。間合いに入った存在を確実に切り伏せる秘剣とされており、世界に六つ存在すると語られている。その内実は秘奥であるが故に表へ出ないため、詳細をほとんど知られておらず、一般には存在するという事実のみが伝わっている。ヴェラ=ミリガンとの戦いで見せたナナオ=ヒビヤの時空を切り裂いたかのような絶技を見たオリバー=ホーンは、あれが新たに生み出された七つ目の魔剣であると直感している。

亜人 (あじん)

人間に近しい外見や生物的な構造を持つものの、人間ではない生物の総称。大枠ではトロールも亜人に含まれる。高い知性や文化を有する亜人には人権が認められており、現在は「エルフ」「ドワーフ」「ケンタウロス」が認められている。亜人の扱いに対するスタンスは魔法使いのあいだでも明確に分かれており、「亜人」に広く人権を認めるべきとする進歩的な「人権派」と、現在の状況を維持すべきだとする「保守派」のあいだで対立が起きている。

無垢の純白 (いのせんとからー)

体内の強い魔力循環と水晶のような髪質がもたらす特異体質。ナナオ=ヒビヤが有するもので、彼女の場合は魔力の循環が活性化すると黒い長髪が真っ白に染まり上がる。この特異体質の持ち主は総じて高い魔力循環を持つため、魔法使いとして重要な才能を有する。だが、この体質の持ち主がイコールで魔法使いとして卓越しているという訳ではなく、ナナオの場合は生まれ育ちの関係もあって体内の魔力をあやつる術に長けている一方、対外に魔力を放出する呪文の行使に苦慮している。

魔法剣 (まほうけん)

魔法と剣術を組み合わせた術理。今から400年前に、当時は大魔術師と称えられるほどに勇名を馳せていたウィルフ=バダウェルが一般人の剣士に斬られるという事件が発生したことに端を発し、以来、危機感を持った魔法使いのあいだで編み出されていった。呪文を使わなければ簡単な魔法行使しかできないため、一定の間合いに踏み込まれると、どんなに熟達した魔法使いであっても剣に負けるという弱点を補うべく学ばれており、剣術に魔法を組み合わせることで近接における攻防の要として考えられている。今日の魔法使いが文字どおりの杖である「白杖」のほかに「杖剣」と呼ばれる剣を下げるようになったのはこのためである。実際の戦闘の際には、切り結びながら自分に有利な足場を作り出したり、逆に相手の足下をおろそかにしたりという牽制に始まり、刀身に炎をまとわせるなど内容は多岐に及ぶ。また、あと一歩踏み込めば相手を杖剣で切りつけて倒すことのできる距離を「一足一杖」の間合いといい、立ち会いにおける基本的な距離感や必殺の間合いを表す一つの概念として考えられている。特に、間合いに入った存在を確実に切り伏せる秘奥義のことを「魔剣」といい、この世界に六つあるとされるそれは内容も不確かなまま、畏怖とともに一種の伝説として語り継がれている。

両極往来者 (りばーし)

月齢をはじめとする外からの影響で、その日の性別が変わる特異体質。ピート=レストンがある日、この体質を発現させた。男性体と女性体は得意とする属性が異なるため、切り替わるごとに苦手だった呪文が簡単に唱えられるようになるといった影響がある。古くは大賢者と称えられるロッド=ファーカーもそうだったように、魔法界において魔導の深奥を目指す後押しとなってきた体質であり、大成するための素晴らしい可能性と考えられている。一方で頭痛や眩暈、気の高ぶりといった身体的な影響や、ある日突然体質が発現し、性別が変わってしまったことに対する戸惑いといった心理的問題など、当事者にはさまざまな問題も降りかかる。キンバリー魔法学校ではそうした性に関する特異体質の持ち主たちが集まる秘密の会合が開催されており、経験者によるフォローや理解によって、当事者となった特異体質の持ち主を支援する体制が構築されている。

クレジット

原作

宇野 朴人

キャラクター原案

ミユキ ルリア

書誌情報

七つの魔剣が支配する 全8巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉

第1巻

(2019-10-10発行、 978-4041087756)

第2巻

(2020-04-25発行、 978-4041094464)

第3巻

(2020-10-26発行、 978-4041094471)

第4巻

(2021-05-26発行、 978-4041113721)

第5巻

(2021-12-25発行、 978-4041120286)

第6巻

(2022-09-26発行、 978-4041125564)

第7巻

(2023-06-26発行、 978-4041138267)

第8巻

(2024-02-26発行、 978-4041146743)

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