ファンタジーと恋を描く漫画家「高屋奈月」特集！オススメ漫画５選39 Pt.

草摩一族が抱えている秘密は、同族以外の異性に抱きつかれたり体調を崩したりすると、十二支の動物へと変身してしまう「物の怪憑き」が存在するというもの。紫呉は戌、由希は鼠だが、夾は仲間外れの猫の物の怪憑きだ。夾には猫の姿の他に、本来の恐ろしい姿がある。そのために草摩一族において「化け物」扱いされてきたが、透は異形の姿となった夾も受け入れ、彼の心を癒やした。草摩本家当主の草摩慊人（あきと）は物の怪憑きの魂を支配する神のような存在で、彼らとの「絆」に固執するが、物の怪憑きたちにとっては「呪い」でしかない。透は大好きな彼らのため、「呪い」を解く方法を模索し始める。主人公や草摩一族内の恋愛模様を描きつつ、「呪い」の謎を追い求める中で本物の愛情や絆とは何かを問う物語にもなっている。

本作に大人へと成長した透たちは登場しないが、彼らの子供たちが母校の都立海原高校で元気に学校生活を送っている様子が描かれている。主人公の彩葉は過去に友人から拒絶されたことがあり、心に傷を負っている女子高生。母親からも否定的な言葉ばかりかけられてきたことで自分に自信が持てず、下ばかり向いて生きてきた。そんな彼女の気持ちを明るくし、良い方向へと導いてくれたのは、はじめや睦生など草摩の血を受け継いだ者たちだった。彼らは個性的だが心優しく、彩葉を否定するような者は一人もいない。草摩本家当主の息子である志岐も登場し、彩葉とも深く関わっていく。本編を読んでいなくとも楽しめるが、本編を知っているとより一層物語の世界観の理解が深まることだろう。

主人公の少女・サクヤは高校三年生。辛い気持ちになった時、いつも大好きな星に支えられてきた。彼女が誕生日に出会ったのは、ミステリアスな少年の千広。海辺にいた彼をサクヤの彼氏だと勘違いした従兄弟の奏が家に招いたのだった。千広に素っ気ない態度を取られるも、サクヤは恋心を抱いてしまう。一方、千広は以前から虚しさを抱えて生きていたが、星空観賞同好会に入り、サクヤたちと過ごすうちに少しずつ心を開いていく。実は、千広は寂し気な表情が印象的な彼の心には別の存在があった。それは自殺未遂により昏睡状態に陥っている天宮桜（あまみやさくら）という少女。千広は友人でありながら桜の自殺を止められなかった自分に不甲斐なさを感じていたのだ。果たしてサクヤの思いは報われるのか。傷ついた心を持つ者同士が惹かれ合う珠玉のラブストーリーだ。

舞台となる世界では、寿のように名字のない「名無し」は差別されており、寿が大切にしていた養護施設の仲間たちも、そうした差別意識を持つ者の放火によって亡くなってしまった。そうして孤独になった寿が出会った擂文は、やがて寿の「生きていく証」となる。擂文は寿の前では軽い男に見えるが、17歳の時に軍のマザーコンピューター「エフ」を守る鉄壁のセキュリティシステムを構築したほどに天才的な頭脳を持っている。しかし、擂文はエリート職の軍人という立場を捨てて、素直で明るい寿との旅を選択した。そこにどのような感情の動きがあったのか。物語の鍵となるのは、どんな願いも叶えるという伝説の「翼」。展開が進むにつれて、その謎めいた「翼」の正体が明らかになっていく。人にとって大切な命や愛情について考えさせられる作品だ。

本作は、遠い昔から因縁関係が続いている乙矢一族と月華一族の争いを描いた物語。争いの原点は千年以上前に日本の守り主として崇められていた少女・水月華だ。彼女が惨殺されたことをきっかけに、彼女に仕えていた飛良（ひら）は人間を邪鬼へと変え、それを喰らう「月華一族の王」として邪法使いになったのだ。その弟の嵯峨は人々を邪心から守る「乙矢一族の守護師」となり、氷月華の悲劇のために、長きにわたり対立するようになったのだった。現代の守護師である環は、邪法使いの血も流れている異色の存在。眠りについていた飛良が、水月華として覚醒した旭の力によって目覚めるが、飛良の過去や悲しみを知った環は、彼を倒すのではなく救いたいと願うようになる。読み進める内に切なくも温かな気持ちになれることだろう。