隣のステラ

本作は、どこにでもいるような高校生の天野千明と、突如として芸能界入りを果たして注目を集めるようになった幼なじみ･柊木昴の恋模様が描かれる。昴がスターになったことで遠い存在となり、千明はやっかみ半分に冗談を言われることもあるが、その明るく朗らかな性格で周囲から好感を抱かれている。一方の昴は人気者になっても決して慢心せず、ひたすら努力を続けているが、プライベートでは天然ぶりを見せる。二人は互いを意識し合っているものの、立場の違いからなかなか気持ちを表に出せないでいるが、そんなもどかしさが本作の魅力の一つとなっている。

柊木昴は天野千明と家族ぐるみの付き合いをしており、千明の父親、母親や千明の妹･天野千穂からも実の家族のように思われている。また、先輩の新堂や篠原葉月は、卓越した演技力を誇るものの気さくな性格で、昴の成長を温かく見守っている。千明も同級生やアルバイト先の同僚･高橋から昴との相談事についてアドバイスを受けるなど、二人は友人や仕事仲間に恵まれている。ややお節介ながらも親身に相談に乗ってくれる周囲の人々は、恋に悩む千明や昴の心のよりどころにもなっている。

天野千明と柊木昴の恋の障害になっているのは、昴が人気俳優という問題以外に、互いの気遣いとコンプレックスによるすれ違いも挙げられる。千明は、幼い頃から遊んでいた昴にいつしか恋心を抱くものの、彼が芸能界で活躍するようになってからは自分とは釣り合わないと考えるようになり、思いを断ち切ろうとするがうまくいかない。昴もまた、気苦労の絶えない日々の中で遊びに誘ってくれる千明の天真爛漫な振る舞いに助けられ、どのような形であれ、いっしょにいたいと考えるようになる。そんな中、千明がほかの女子の前で強がる形で口にした「幼なじみでしかない」という言葉を真に受け、昴は千明を幸せにしてくれる人がきっと現れると身を引く覚悟を決めるのだった。